original
著者:稲荷直史(Nishino Kobayashi)
「百年後の自分が書いた日記を偶然見つけてしまいました。つい先日、祖父の家にある仏壇の裏を掃除していた時のことでした。
事実やら史実と異なる可能性も大いにありますが、現時点では確認のしようもないですし、あきらめていただけますと幸いです。」
(まえがきより)
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「二一二四年一月
一月七日(金)
アイフォンを買い替えた。アイフォンナインティーンナイン。どうせなら、次の機種が出るまで待てばよかった気もする。
一月二十五日(火)
区役所へ。最近変わったばかりでいまの年号が思い出せなかったので、仕方なく「令和百六年」と記入した。間違ってはいないはず。
一月三十一日(月)
自分は、誰かに伝えたいようなことをひとつも持っていないかもしれない、と妙な気持ちになった。月があまりにもきれいで、夜のにせものみたいだと思った。」
(本文より抜粋)