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愛の練習

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著者:中村季節 「まともな恋愛経験をもたぬ私がはじめてちゃんと人と〝付き合う〟ということをしはじめた数カ月の記録。」(著者より) 前作『大工日記』に続く、二作目の日記本です。 第6回「日記祭」出店作品。 ------- 九月二日(火)  立川の小学校現場朝5時起き。後部座席でまるまって朝の渋滞の音を聞いている。丑三つ時に「きのうはたのしかた、ありがとう」とみずなすからメッセージが届いていたのをなんどもなんども読み返して適切な返信を考えている。昨日は終電のバスでかえるみずなすを送ってから帰りの電車でずっと腹がクルクルと鳩のような音をたてており、なんかの小説で身体が植物に巣食われる乙女の話があったな、私の場合は鳩だったのか。鳩ならたのしくていいな。布団の中でもデートのあとってどっちから先にメッセージを送るべきなんだっけ? 検索のちヤフー知恵袋のとんちんかんな回答を読みふけったりわけのわからん恋愛コラムを読んだり、今日知ったばかりの誕生日と年齢から西暦を計算してこれであってるんか? と思いながら相性占いをしたり目を閉じたり忙しくしていて全然眠った気がしなかった。そうか昨日私たちは結局、十時間も一緒にいたのだ。わたしは初めてだれかとマッチングアプリで出会い、デートというものをしたのだという感慨で胸がひたされている。しかし、これが恋なのだろうか、恋って一体なんだったっけ? どんな感じだったっけ。現場に着いても一体なんの作業をしたのか覚えていない。弁当に確か何かのあんかけ状のものが入っていた。心と身体が完全に乖離している。

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