original
著者:稲荷直史(Nishino Kobayashi)
Nishino Kobayashiという名前で再び音楽を作り始めた著者が綴った、2023年8月から10月までの日記。アルバム制作と、日常の記録。
「八月六日(日)
無理に発声したら喉を痛めてしまった。耳鼻科の先生も安静にしていないといけないよ、と言っていたのに。私は焦っているのだろうか。最初はもやもやしていたが、だんだんしんみりした気持ちになってきた。このまま治らなかったらありとあらゆるアカウントを消して、知らない町に引っ越して、全く違う形で生きていくのがいいような気がしている。こういうときに、自分の出身が東京でなければよかったのにと思う。東京とはいっても県境の端っこで都会とはいえない環境だったので、どっちつかずで損しているみたいだと十代の頃は思っていた。いつか、東京以外の場所へ行ってしまいたくなったときのために帰る場所を自分の手で探しておく必要があるのかもしれない。とんだひと手間。」
(p.5より)