original


著者:
麻生修司
井尻貴子
江藤信暁
小川泰治
荻野陽太
片柳那奈子
古賀裕也
竹岡香帆
得居千照
堀 静香
山本和則
企画立案・編集:
小川泰治
表紙デザイン:
こやまりえこ
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人と集まって日常とは異なる空間をつくる哲学対話の時間は、それぞれの日常とゆるやかにつながっている。街で、バーで、学校で、オンラインで、家族で哲学対話をしている11名による対話のあった日の日記18本を収録。
(発行元から引用)
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3月8日(金) 哲学対話、やる?
麻生修司
(前略)
そして最後に、「寄りかかってしまってごめん」と言った。こんなにいろいろ相談してしまって、迷惑じゃないだろうか。答えが出ない対話をして、嫌じゃないだろうか。
そういった意味をすべて含めて、ごめん、と言った。するとその友人は、「あなたと話すとき、ボールをグローブのど真ん中にいれないといけない気がして、もっと言えば、ここにボールを投げてきてと言われている気がしていて、今日電話していいか聞かれたとき、怖かった。だから、へっぽこな球を投げても、怒らないでいてくれるならそれでいいよ」と言われた。
その言葉は、自分がその友人に対して思っていたことと、とても似ていた。だから、こう返した。「俺は、あなたがどんなボールでも受け取らなきゃいけないって言ってきているような気がしていた。だから、どんなに傷ついても受け取らなきゃと思っていた」と。友人はそれを聞いて驚いていた。そして、なんだかおかしくなって二人で笑った。
わけのわからない話をして、答えが出なくって、それでも誰かと話すことでシンプルなことに気づいたり、余計わけがわからなくなりながらも一筋の光を見つけたりする。誰かと話すことは、苦しさと楽しさをどちらとも運んでくる。これからもそんな対話ができたらいいなと思いながら、眠りについた。