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著者:樽本樹廣
デザイン:森島彩生
吉祥寺にある古本屋「百年」さんの、2006年7月から2007年8月までの日記を振り返ったzineです。エッセイ「ほんのこと」を付録。
『2006.10.30(月)
市から戻ると、山川さんから「市にはもうだいぶ慣れましたよね」と聞かれる。今日もほしかった外文を買い逃して、その愚痴を言った流れだったと思う。
そこで考える。
僕は市に本当に慣れたのだろうかと。
人の感じには慣れたと思う。いい人が多い。どーん、と構えた古本屋の親父みたいなのは少ない。
だけど、商品に関してはどうなんだろうか? ほしいものが落札できなかったり、高く買いすぎてしまったりということが多々ある。
今日も手塚治虫の束を高く買いすぎた気がするし(明後日から治虫祭りです)。ほしいものが適正で落とせるようになったら、慣れたと言えるのだろうか。
それすらもはっきりとわからん日々。
だが、楽しいことは楽しいので、まだまだ苦しみながらも前へ行きたいと思う日々でもある。
市場で落札できない時は縁がなかったと思うようになった。そうするとあまり悔しくない。』
(p.55〜56より)