

著者:僕のマリ
装画:タカヤママキコ
2023年4月から9月までの日記+エッセイ「実験と回復」
7月29日
「夫が仕事にスーツを着ていった。普段見ることのない姿なので、凝視。思えば自分も、会社の制服にストッキング、ヒールで通勤していた過去がある。
部屋の掃除をして洗濯物を干したらもう汗だくで、体力が減っていくのを感じる。やることを済ませたので、アイスコーヒーを飲みながら読書。森茉莉のエッセイを図書館で借りてきたのだった。
何年か前の真夏、森茉莉の本をよく読んでいた。
一言で表すならば、チャーミングな人だなと思う。
バッグに本を二冊ほど入れて(小説のほうが多かった)、五反田のTOCや横浜の古びた喫茶店、早稲田のケーキが美味しい喫茶店で一時間ほど読書した。アイスコーヒーの氷がみしみしと小さな音を立てながら溶け、お冷やのグラスが汗をかくのに気づくと夕方で、外が明るくて少し寂しかった。そんな思い出が残る喫茶店も、続々閉店している。」
(7月29日より一部抜粋)