著者:栗本凌太郎
感熱紙に一日ごとに印刷された日記。
オンラインショップではランダムに選んだ5枚セットでの販売です。
2023. 06. 28
『午前三時。お風呂を出た後、髪を乾かしてそのまま外に出る。まとわりつくような生ぬるい空気。大きな虫の羽音が耳元を掠めて飛んでいった。コンビニに印刷をしに行ってスーパーに寄って柑橘系の飲み物を買う。空の色は薄い青みがかった自分の爪と同じ色だと思った。コンビニまで自転車できているおじさん。レジから「年齢確認をお願いします」という音声が聞こえてきて、こんな時間からお酒かーと思う。さっきの虫は見えなかったけれど、もしかしたらゴキブリだった可能性もあるなと思い返して少しだけ身震いする。なにか涼しい曲を聞きたいなと思ってスマホの顔認証をする。』
2023. 08. 12
「お店番。バスの窓から入り込む陽の光に気分が良くなって、音は出さずに耳から入ってくる歌詞を口ずさんでみる。ピンク色のサンダルを履いた女の子が、ひっくり返ったセミをしゃがんで覗き込んでいるのが見える。」
2023. 09. 16
「白いYシャツの胸の辺りが血まみれで、足を引きずって歩いている人をバスの窓から見かけた。車内にいる人たちは誰もそのことに気づいていないようだった。もしくはなんとも思っていなかった。旅行の予定を考えていて、どこか遠くに行きたいなと思ったけれど、遠くっておそらく距離のことじゃないと思う。」