著者:ヒロ
<イノマーが亡くなって三年。ようやく彼の日記を本にした。まだまだ捨てられないものが溢れるこの部屋で、『GAN日記』に花を添えるように、わたしも日記をつける。>
1.ヒロさんの日記(2022年12月1日〜12月31日)
2. イノマーからの「言葉のお守り」
- 遺されたメモ群は、これからの人生を生きていく力になった。
判型:B6/24P
『12月1日(木)
午前中、新しい部屋の鍵を受け取りに不動産屋へ。
はじめての一人暮らし、私の部屋。
窓を開けて風を感じる。
簡単に拭き掃除をして、部屋を出る。
午後、まるさんが荷造りの手伝いに来てくれる。
「明日、引越しする人の部屋じゃないですよ!笑」と早速ツッコミが入る。
とりあえず買ってきてくれた唐揚げ弁当を一緒に食べていると、担当編集者の石原さんが見本誌を持ってきてくれる。
過去最高に散らかってる状態で、日記本の最終打ち合わせ。
しかも、かなり重要な話を持ってきた!
私の判断能力がない状態を狙ってきたとしか思えない。
石原さん、やるな、さすがだ。
まるさんと相談しながら打ち合わせ終了。
荷造り手伝いますよ、と言ってくれるも
何を手伝ってもらえばいいのかもわからず、お気持ちだけいただく。
明日の引越しが不安だ。
まるさんも私も17時には家を出なきゃいけないから、それまで黙々と箱詰め。
まるさんは、キッチン用品、食器類を手際よく詰めていく。
私は、洋服や小物を右から左へただ移動してるだけ。
全然片付けられない。
「ヒロさん、今日お風呂入りますか?」
「え?入りますけど…笑」
「もうお風呂場にしか置く場所ないから、ダメですか?」
ダメとは言えなかった。
「わかりました!今日は外でお風呂入ります!笑」
葬式の日も、部屋に荷物が入りきらなくて、浴槽とベランダに運び入れた。
まるさんのこういうところが好きだ。
浴槽に箱詰めしたダンボールをどんどん
積んでいく、シュール。
あっという間に17時。
がんばってください!とまるさん帰宅。
私も着替えて、家を出る。
ハルさん&ミネタ君のライブを見に横浜へ。
アコースティックライブ、とてもよかった。
2019年2月新宿LOFTでのライブを思い出す。
オナマシ、ハルさん、ミネタ君。
ここにイノマーがいないのが不思議な感じ。
センチメンタルな気分になる前に思考をストップ!
考えたら止まらなくなる。
終演後、楽屋挨拶。
ハルさん、ミネタくんにご報告。
「イノマーと住んだ部屋を出ることになりました!明日、引越します!」
私の決意表明。
メールじゃなくて直接会って伝えられてよかった。
明日がんばります!!!
ふたりから言葉のお守りをもらって、ライブハウスを出て駅へと向かう。
中華街のネオンがまぶしい。
今、自分がどこにいるのかわからなくなり混乱する。
ふらふらになりながら、なんとか下北沢へ。
ダッシュでラーメン食べて帰宅。
水抜きのために冷蔵庫を開ける。
まるさんが買ってきてくれたケーキがあった。
誕生日プレートには
「イノマー&ヒロ ハッピーバースデー」
合同誕生日ケーキだ。
食器類はダンボールの中。
手づかみでかぶりつく、甘くて美味しい。
元気が出て、また荷造りを進める。
午前2時過ぎ。
ディレクターの今井さんに
「もう、これが限界です。笑」
と部屋の写真を送る。
「明日、頑張りましょう!」と返信あり。
もう、今やっても、明日やっても変わらないだろうと、清々しい気持ちになって寝ることに。
まあ、どうにかなるだろう。
あきらめたところから全ては始まる。
ベッドの上の荷物を床に落として寝床を作る。
この部屋で寝るのも今日で最後。
感傷に浸る余裕もなく疲れ果てて爆睡。
長い長い一日だった。
さて、明日はどうなる!』