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リトルプレス
著者:ユニット・◯
発行年:2022年
「この本はかのぴとこーしーのふたりの交差したりしなかったりする日常を記したものです。
わたしたちは一週間分の日記を書き溜め、毎週月曜日におたがいの日々を交換しました。(...)おたがいに書き、読んでいくうちに少しずつ日記の書かれ方自体が変化していき、それはささやかながら日常そのものをも変えていったような気が、個人的にはしています。書くこと、読むことの交差した日記をどうかみなさまにも楽しんでいただけると幸いです。」(序文より)
12月10日(金)
「廊下に白い小さな紙が落ちていたので拾って裏返してみると、シール台紙だった。新幹線や電車やトラックのシール。すぐ近くに置かれたベビーカーのなかの幼児のものだろうと思い。母親を見やる。彼女はカウンターに向かって、真剣な表情で話をしている最中だった。そちらを邪魔せぬよう、しゃがんだ姿勢で幼児に直接『これ、落としてたよ』とシールを手渡そうとした。しかし、彼はわたしの手を払いのけようと必死で全身をくねらせ、『や!』と叫んだ――」